「平素より(へいそより)」とは、「ふだんから」「日ごろから」という意味のビジネスの場面で非常によく使われる丁寧な表現です。
しかし、日常会話ではあまり耳にすることがなく、意味や使い方に戸惑う人も多いのではないでしょうか。
実際、「平素よりご愛顧いただきありがとうございます」「平素より格別のご高配を賜り…」といったフレーズを見て、「どういう意味?」「自分も使っていいの?」と感じたことがある方もいるかもしれません。
そこで今回は、「平素より」の意味や使い方を丁寧に解説し、具体的な例文や注意点も紹介していきたいと思います。
「平素より」の意味

「平素より(へいそより)」とは、「日ごろから」「ふだんから」をあらたまった言い方にした敬語表現です。
主に相手の継続的な支援や関係性に対する感謝や敬意を表すときに使われます。
たとえば、企業のメールや案内文などで見かける「平素よりご愛顧いただき、誠にありがとうございます」という一文は、「いつも弊社の商品やサービスをご利用いただきありがとうございます」という意味を、より丁寧で礼儀正しい表現にしたものです。
また、「平素」はそれ単体でも「いつも」「ふだん」という意味の名詞であり、「より」が加わることで「〜から」「〜の時点からずっと」という継続性を強調しています。
ポイントまとめ:
- 「平素」=日常・ふだん・いつも
- 「平素より」=ふだんからずっと(敬意を含んだ言い回し)
- 感謝・謝罪・案内など、相手との継続的な関係を前提とした場面で使われる
「平素より」を使う場面は?——フォーマルな場面限定

「平素より」は、次のようなフォーマルな文書や挨拶で使われます。
よくある使用シーン:
- ビジネスメール(お礼や案内など)
- お詫び文、謝罪文
- 年末年始の挨拶
- 企業からのお知らせ文 など
「平素より」よく使われるフレーズ(例文集)

「平素より」は主にビジネスシーンで使われ、感謝・お詫び・お知らせ・挨拶などさまざまな目的で活用されます。
ここでは、場面ごとに代表的な例文を紹介します。
■ 感謝の気持ちを伝えるとき
「平素より」を使う最も一般的な場面です。
取引先や顧客に対して、継続的な関係への感謝を丁寧に表現できます。
- 平素よりご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
→ 商品やサービスを日常的に利用してくれている顧客向け。 - 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
→ 特に取引先などビジネスパートナーに対して、長年の支援を感謝する定型表現。 - 平素より弊社サービスをご利用いただき、心より感謝申し上げます。
→ より柔らかく、感情を込めた表現。Webサイトやメールマガジンなどにも適しています。
■ お詫び・トラブル対応のとき
感謝の気持ちとともに、迷惑をかけたことへのお詫びを伝える場面でも使われます。
- 平素よりご利用いただいております皆様には、多大なるご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げます。
→ システム障害やサービス停止時によく見られる表現。
平素は格別のご高配を賜っておりますにもかかわらず、このような事態となり、誠に申し訳ございません。
→ 信頼関係を前提に謝罪する文章に適しています。
■ お知らせ・告知・変更案内のとき
何かを案内・通知する際にも「平素より」は定番の前置きです。
- 平素より弊社製品をご愛顧賜り、厚く御礼申し上げます。このたび、製品仕様を一部変更いたしますのでご案内申し上げます。
- 平素は当店をご利用いただきありがとうございます。誠に勝手ながら、〇月〇日より営業時間を変更させていただきます。
- 平素より格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。年末年始の営業について以下の通りご案内いたします。
■ 季節の挨拶やご挨拶メールに
時候の挨拶や年末年始のご挨拶にも、定型句として組み込まれることが多いです。
- 平素は格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。寒さ厳しき折、皆様のご健勝をお祈り申し上げます。
- 平素より大変お世話になっております。年末のご挨拶を申し上げますとともに、来年も変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
■ その他の応用表現
少し形式を変えた表現や、社内文書・メールでの応用も紹介します。
- 平素から多大なるご支援をいただき、心より御礼申し上げます。
→ 「より」ではなく「から」を使った別表現。少し口語寄りにしたいときにも。 - 平素のご高配に対し、厚く感謝申し上げます。
→ 書類・契約書の末尾などで使える簡潔な文。
注意点:使い方を間違えると不自然に

「平素より」は丁寧で格式ある表現だからこそ、使い方を間違えると不自然になったり、かえって堅苦しすぎたりすることがあります。
正しい場面と使い方を理解しておきましょう。
1. 自分の行動に使うのはNG
「平素より」は、相手に対して敬意を払う言葉です。
そのため、自分の行動や努力に対して使うのは不自然です。
- 日頃より努力しております。
- いつもご支援いただきありがとうございます(感謝の対象が相手であればOK)
- 平素より努力しております。
- 平素より勉強に励んでいます。
2. 口頭での使用は不自然
「平素より」はあくまで書き言葉です。
日常会話やカジュアルな場面で口頭で使うと、堅すぎて違和感があります。
- ✕「平素よりありがとうございます!(口頭)」
→〇「いつもありがとうございます!」が自然。
3. 文の冒頭で使うのが基本
「平素より」は、多くの場合、文頭に置いて使うのが自然な形です。
文の途中で突然出てくると読みにくくなります。
- 平素よりご愛顧いただき、ありがとうございます。
- ご愛顧いただいていることに、平素より感謝しております。
→意味は通じますが、やや不自然。
4. 感謝やお詫びなど「継続的な関係性」が前提
「平素より」は、「ふだんから」「日常的に」の意味を持つため、一時的な関係や初対面の相手には使わないよう注意が必要です。
はじめてのお客様には、「このたびはご利用いただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。」と表現しましょう。
5. 「平素」だけで終わらせない
「平素」は単独では名詞なので、「より」や「から」といった助詞と組み合わせて使います。
「平素、ありがとうございます」のような文は文法的にやや不自然です。
- 平素よりご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
- 平素からのご厚情に深く感謝申し上げます。
類語との違いを理解しておくと安心

「平素より」は「いつも」「日頃」とほぼ同じ意味ですが、よりかしこまった表現です。
違いをまとめました。
表現 | 意味 | フォーマル度 | 用途の例 |
---|---|---|---|
いつも | 常に | ★☆☆☆ | 友人・同僚とのカジュアルな会話 |
日頃(より) | 日常的に | ★★☆☆ | 社内メールなどのやや丁寧な場面 |
平素(より) | ふだんから丁寧に | ★★★★ | 取引先や社外文書などかしこまった場面 |
無理に「平素より」を使う必要がない場面も多いため、相手や文脈に応じて言い換える柔軟さも大切です。
「平素より」まとめ:正しく使えば信頼感が伝わる

「平素より」はとても丁寧な表現で、特にビジネスシーンでは相手への敬意や感謝の気持ちをスマートに伝えられる便利な言葉です。
正しく使うことで、文章に格式と信頼感を持たせることができます。
ビジネスの場面では特に重宝される表現なので、適切なタイミング・相手・文脈を見極めて、上手に活用しましょう。
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